一般企業の障害者雇用で働きながら障害年金申請

「働いているけど、一般企業の障害者雇用で支援を受けながら働いているから、障害年金をもらえますよね?」

というご質問を頂くことがあります。

たしかに、一般企業の障害者雇用で働きながら障害年金を受給されている方はたくさんいらっしゃいます。

しかし、一般企業の障害者雇用で働きながら申請をして不支給の結果となってしまった方もいらっしゃいます。

この記事では、一般企業の障害者雇用で働きながら障害年金を申請する際のポイントや注意点、実際の受給事例などを詳しくご説明したいと思います。

障害年金とは

障害年金とは

「障害年金」は、公的年金に加入している人が病気やけがなどによって「障害の状態」になったとき、生活を支えるものとして支給されます。

「障害の状態」とは、視覚障害や聴覚障害、肢体不自由などの障害だけでなく、長期療養が必要ながんや糖尿病、心疾患、呼吸器疾患などの内部疾患、または統合失調症などの精神の障害により、仕事や日常生活が著しく制限を受ける状態になったときなども含まれます。

一般企業の障害者雇用で働いていたら障害年金を受給できますか?

就労継続支援B型事業所で働いていたら障害年金を受給できますか?

従業員が一定数以上の規模の事業主は、従業員に占める身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合を「法定雇用率」以上にする義務があります。

民間企業の法定雇用率は2.5%です。

従業員を40人以上雇用している事業主は、障害者を1人以上雇用しなければなりません。

事業主には「障害者が能力や適性が発揮でき、生きがいを持って働けるような職場作り」などが求められています。(厚生労働省HP:事業主に望まれること

そのため、一般企業の障害者雇用で働いている方は「働いていても支援を受けながらなので、障害年金をもらえるんですよね?」と思われている方が多くいらっしゃいます。

しかし、一般企業の障害者雇用で働いているからといって、必ず障害年金を受給できるわけではありません。

障害年金には受給要件というものがあり、以下のケース1とケース2に該当する場合は「仕事や日常生活が著しく制限を受ける状態」であっても障害年金を受給することはできません。

またケース1とケース2の要件を満たしていても、ケース3の要件を満たさない場合は受給ができません。

それでは、一般企業の障害者雇用で働いていても障害年金を受給できないケースを見てみましょう。

【受給できないケース1】年金制度の加入要件を満たしていない

初診日の時点で国民年金や厚生年金などに加入していない場合は障害年金を受給することはできません。

ただし、「初診日が20歳前の方」、又は「日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間に初診日がある方」は、制度加入要件は問われません。

【受給できないケース2】保険料の納付要件を満たしていない

初診日の前日において、初診日がある月の2カ月前までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上ない場合は、障害の程度に関わらず、障害年金を受給することはできません。

ただし、初診日が20歳より前にある場合はこの保険料納付要件は不要です。

【受給できないケース3】障害の程度が軽い

精神の障害に係る等級判定ガイドライン」では「相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。」と記載されています。

この具体例として「就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。」と記載されています。

これは「検討する」とは書かれていますが「必ず支給する」とは書かれていない点に注意をしてください。

また、就労に関して障害の程度が重いと判断されても、障害年金の受給資格は、病状、通院状況、生活環境などさまざまな視点から総合的に判断されます。

一般企業の障害者雇用で働いていても、総合的に判断して障害の程度が軽いと判断された場合は、障害年金を受給することはできません。

一般企業の障害者雇用で働きながら障害年金を申請するポイント

就労継続支援B型事業所で働きながら障害年金を申請するポイント

一般企業の障害者雇用であっても、就労している場合は「労働能力あり」と評価されて不支給となってしまうことがあります。

そこで就労に制限がある際は「就労時の状況などを詳しく伝える」ことが大切です。

例えば、周囲からの支援や免除されている業務がある場合は、診断書や病歴就労状況等申立書にしっかりと反映する必要があります。

また、就労状況以外にも病状、通院状況、生活環境などに関しても制限を受ける状態にある場合は、その状態を詳しく伝えることが重要になります。

一般企業の障害者雇用で働きながら障害年金を受給できたケース

それでは、当事務所で申請をサポートさせて頂いた一般企業の障害者雇用で働かれている依頼者様で受給が決まった例をご紹介します。

【事例1】ご自身で申請して不許可だった方の事例

病名鬱病(うつびょう)
性別女性
支給額年額 約78万円
申請結果障害基礎年金2級

ご依頼者様は、複雑な家庭環境の下で育ったこともあり、20歳前からうつ病を発症し精神科を受診されていました。

頼れる身内がいないこともあり、障害者雇用で就労しながら一人暮らしをされていました。

相談員の方から障害年金の制度を教えていただき、ご自身で手続きをされましたが結果は不支給でした。

しかし結果に納得できず、再度チャレンジしたいということで当事務所にご依頼頂きました。

当事務所での申請手続きは、ご自身で申請されて不支給になった結果を念頭において進めていきました。

ご相談者様からのヒアリングで、頼れる身内がおらず余儀なく一人暮らしをしていること、そして病状からヘルパーなどを受け入れられず日常生活は破綻していることが分かりました。

また、お仕事もされていますが、対人交流ができず職場では孤立していることや、常に相談員の指導の下で単純作業のみに従事しており電話対応などは免除されているとのことでした。

診断書だけでは伝えられない病歴や、日常生活などについては「病歴就労状況等申立書」で補足説明をしました。

結果は2カ月足らずの審査で、障害基礎年金2級に認定されました。

【事例723】うつ病|障害基礎年金2級(過去不支給になって再申請した事例)

ご自身で申請して不許可となった事例

ご紹介した事例以外でも、一般企業の障害者雇用枠で働きながら、ご自身で障害年金を申請して不許可となってしまった方もいらっしゃいます。

ご自身で申請されて日常生活や就労状況を正確に伝えることが出来ず不許可となった方で、当事務所で再申請をして受給が認められたものをご紹介します。

※これらの事例は、障害の程度が重いのにも関わらず申請の際に正確に伝えられなかった方ですので、障害の状態が軽い方が当事務所の申請で受給になるということではありません。

【事例2】障害者雇用で働き始めて初めての更新の方の事例

病名鬱病(うつびょう)
性別男性
支給額年額 約59万円
申請結果障害厚生年金3級

依頼者様は、2年前に当事務所にて裁定請求を行い、障害厚生年金3級を受給していました。

今回、初めての更新時期を向えたことで自分で主治医の先生に診断書記載の為の情報を伝えるのは難しく、また前回の裁定請求時とは状況が異なり、就労を始められていたことで障害年金が止まってしまうのではないかと不安があり、弊社にご相談をいただきました。

サポートでは医療機関へ診断書の作成依頼を行う前に、ご本人様より前回裁定請求時以降の経過や日常生活状況・就労状況をヒアリングさせていただきました。

日常生活状況については大きな変わりはなく、5ヵ月前から就労を始められたとのことでした。

実際の就労状況について具体的にお伺いすると、雇用主は病状への理解があり、電話応対の免除や締切期限に追われることのないマニュアル化された事務作業など従事する業務内容に制限を設けた上で、一つの業務をこなす度にチェックをしてもらうなど常時上司の見守り支援のある配慮の得られる環境下であるため、就業が続けられているということでした。

診断書の記載内容だけでは認定医に実際の就労状況が伝わらず、単に就労が出来ていると捉えられてしまう可能性もあった為、補足資料として「病歴就労状況等申立書」を作成し「障害状態確認届」と合わせて提出しました。

結果、等級に変更なく「障害厚生年金3級」として審査され、次回更新までの期間は「5年」と延長されることとなりました。

【事例883】うつ病|障害厚生年金3級(障害者雇用で働き始めて初めての更新の事例)

障害者雇用で働き始めて初めての更新の方の事例

ご紹介した事例以外でも、前回の審査時には働いていなかったけれど、今回の更新審査の時点では一般企業の障害者雇用枠で働いているという方はたくさんいらっしゃいます。

また、前回の審査の後に就労を開始した上に一人暮らしも始めたという方もいらっしゃいます。

働き始めたことで更新が出来るか不安になり、当事務所で申請をして更新が認められたものをご紹介します。

※これらの事例は、前回の審査時と変わらず障害の程度が重い方ですので、障害の状態が軽くなった場合は更新が認められない場合もあります。

まとめ

まとめ

この記事では、一般企業の障害者雇用で働きながら障害年金を申請する際のポイントや注意点、受給できた事例などを紹介しました。

一般企業の障害者雇用で働いていても障害年金を受給出来るケースと出来ないケースがあることをご理解いただけたのではないかと思います。

また、就労状況、病状、通院状況、生活環境などに関しても制限を受ける状態にある場合は、その状態を詳しく伝えることが重要だということもご理解いただけたのではないかと思います。

ご自身で申請をご検討されている方が手続きを進める上で、この記事が少しでも参考になりましたら幸いです。

「申請に不安がある」という方や「状況を上手く伝えられるか心配」という方は、お気軽に当事務所にご相談下さい。

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